夏だまりの家
それは多分、時間は解決してくれなくて
予告編
『夏だまりの家』の道
『夏だまりの家』は2020年から2021年にかけてつくられた映画である。明日を歩んでいくために、見て見ぬフリをしてきた家族という関係性に立ち返りたい。当初、この作品は監督である石井梨帆の個人的な想いの元に始動しました。自身と家族という存在の関係を、身近に、そしてダイレクトに向き合おうとした時、奇しくも時代は、2020年・3月でした。
否応なく、人と人の繋がりを再認識せざるを得なくなった。
そして、新たに関係性を構築しなければならない必要がこの渦中に生きる私達は強いられている。そんな現代をもどかしく思いながら、だからこそ『夏だまりの家』は生まれました。この作品は、この渦中だからこそ、遠隔撮影や望遠レンズを用いて、人との関係・空間・時間・距離を映しとるために方法論的に追及した映画であると考えます。
最後に、この映画は”自身”と”家族”の映画であると同時に、”自身”と”他者”の映画です。『夏だまりの家』が辿ってきた軌跡が、どの時代であっても変わらぬ “自身” と “他者” の在り方を巡ることを願っています。
物語(あらすじ)
2020年の秋。
初深(はつみ)は、2年ぶりに実家である家に⾜を踏み⼊れる。
その家は、祖⺟の死を境に夏に留まり続けていた。
初深はやがて、 “その家で変わらずに暮らし続ける兄妹たち” と “祖⺟と親交のあった少年” と同じ屋根の下で⽣活を営み始める。
映画/2020年/73分55秒/カラー/スタンダード/ステレオ
お知らせ
「S.T.E.P. 2021」(大学連携による映画人育成のための上映会)にて上映いたします。
開催期間:2021年3月14日(日)~19日(金)
会場:K’s cinema
この度「大学連携による映画人育成のための上映会S.T.E.P」にて『夏だまりの家』が上映される運びとなりました。
作品が私達の手元を離れ歩いてゆく中で、
人の想いと、
言葉と、
眼差しに、
この映画が如何様にも形や姿を自在に変えられる事を知りました。
今回の上映で、どのような『夏だまりの家』を観客の方々に受け取ってもらえるのか。
同じ空間、同じ時間を多くの人と共有できることが、今から楽しみでなりません。
ひとりでも多くの人と作品が出逢い、自身と『夏だまりの家』の関係を築いてもらえますように。
気をつけつつ、お越し頂ければ幸いです。
何卒、宜しくお願い致します。
石井 梨帆(監督)
卒業制作展ではオンライン上映を含め、私の想像を遥かに超える、多くの方に『夏だまりの家』を観ていただきました。
ソーシャルディスタンス、三密。
人と会うことが難しかったこの年に、こんなにたくさんの人と繋がれたのは「奇跡」です。
そしてこの度、『大学連携による映画人育成のための上映会S.T.E.P』での上映が決まりました。
私にはまだ馴染みのない土地での上映。
きっと、また、多くの人と出会い、繋がれる。
そんな期待で私の胸は高鳴っています。
たくさんの「奇跡」をもたらしてくれる『夏だまりの家』に感謝して…
ぜひ、劇場でお待ちしております。
山口 紗也可(主演・結城 初深役)
CAST
山口 紗也可
Sayaka Yamaguchi
(結城 初深)
1999年生まれ 福岡県出身
現実で⽣きている⼈より、物語の中を⽣きている⼈のほうが輝いて⾒えたことから、漠然と役者になりたいと思い始めた。⾃⾝が監督、主演を務めた『吸って、吐いて。』がある。
主な出演作品に、『告』(監督:⼩寺智也)『少⼥逃避⾏』(監督:⽔⼝絵美⼦)舞台『無差別』(作:中屋敷法⼆ 演出:⼩原藍)などがある。
作品へのメッセージ
カメラの前に⽴って、共演者と⾔葉を交わすうちに、何が本当なのか分からなくなりました。ただ、あの家の光がとても綺麗で、空気が⼼地よくて、ずっと前からこの家に住んでいたような、懐かしくてなぜか胸がきゅーっとなるような感覚がずっとありました。きっとこの映画も、そういう⾒えないものが映り込んでいるんじゃないかと思います。
細井 春平
Syunpei Hosoi
(平野 想介)
2001年⽣まれ 滋賀県出⾝
死ぬまでに⾃分以外の⼈⽣を送ってみたいという思いと友達に⾃慢したいという下⼼から俳優を志す。今作が初出演作となる。
作品へのメッセージ
平野想介を演じることは、分からないことだらけでしたが、分からないなりに演じました。そこにいたいといった感情の葛藤がとてもしんどくて、考えを放棄して逃げた時がありましたが、最後はそれに向き合って演じることができて、⾃分でも想定していない物が⼝から出てきて驚きました。本当に良い経験をさせていただきました。
吉井 優
Yu Yoshii
(結城 透)
1995年⽣まれ 京都府出⾝
京都造形芸術⼤学(現:京都芸術⼤学)⼊学後、『⾚い⽟、』(監督:⾼橋伴明)に出演。主演を務めた『べー』(監督:阪本裕吾)では、学⽣残酷映画祭2016にてグランプリ、観客賞を受賞する。主な出演作品に『カルチェ』(監督:植⽊咲楽)『オーファンズ・ブルース』(監督:⼯藤梨穂)『ロスト・ベイベー・ロスト』(監督:柘植勇⼈)『浪漫倶楽部』(監督:加島⼤靖)がある。
作品へのメッセージ
脚本上に役者を制約する台詞やト書きは極⼒排除されており、唯⼀の拠り所は『関係性』てであったと感じています。現実世界にいながら、⾃分を⾃分たらしめる為に誰かとの『関係性』に頼っている私がいることを再認識しました。奇しくも、この映画に込められた考え⽅に通じる発⾒であったかも知れません。そんな「夏だまりの家」がどんな映画に昇華するものか、 出演者ながら楽しみで仕⽅ありません。 ご覧になった観客の⽅に、楽しんでいただけていれば幸いです。
⻑⾕川 七虹
Nako Hasegawa
(結城 来夢)
2001年⽣まれ 愛知県出⾝
中学時代に観た映画に救われ、⾃⾝が映画に携わっていくことを志すようになる。
主な出演作品に、舞台『滅びの⼦らに星の祈りを』(脚本・演出 須⾙英)『転校⽣』(作:平⽥オリザ 演出:⼭本タカ)がある。
作品へのメッセージ
この作品の中に息衝く⼈々や空気、時間に眼差しが向けられた時、⽣まれてゆくたった⼀度きりの幾つもの瞬間が、暗闇の中で守られますように。
池内 祥⼈
Sachihito Ikeuchi
(向井 朝陽)
1998年生まれ 神奈川県出⾝
20歳の時にヤン・イクチュン監督の『息もできない』を鑑賞し、⾔葉では表すことが出来ないふつふつと湧き上がるものを⼼の中に感じ、本気で俳優を志す。出演した『CHAIN』(監督:福岡芳穂)が劇場公開を予定されている。
主な出演作に、『スロータージャップ』(監督:阪本裕吾)『ぱん』(監督:辻凪⼦)『てれすこ』(監督:⼩寺智也)舞台『無差別』(作:中屋敷法⼆ 演出:⼩原藍)がある。
作品へのメッセージ
この世に⽣まれて、気づけば当たり前のように存在している家族。どこかの⼩さな街で、⽋けている何かを探すこともなくただ平等に時間は流れる。そんな時間の中で交わる⼈間たちの姿に注⽬して観ていただきたいです。本当に当たり前なのか。当たり前とはなんなのか
STAFF
撮影:仲村逸平
照明:⼭⻄⾥奈
録音・衣装メイク:池⾕佳菜代
美術:沖中真由
音楽:⻑⾕川⼤祐
制作:⼭⼝紗也可、池内祥⼈
編集:⼭⼝紗也可
助監督:川﨑涼⾹
監督:⽯井梨帆
監督
石井 梨帆
Riho Ishiia
1997 年⽣まれ 茨城県出⾝
中学時代に、映画・⼩説・アニメなど多岐に渡る物語に触れ、物語を⽣み出す憧れを抱くようになりその道を志す。⾼校時代より映像・映画制作を始める。
監督作に『軌跡が居る』(2019)がある。
作品へのメッセージ
想いを想いのまま持ち続けながら、この作品を製作していました。それは映画の中の登場⼈物達と同じように、幼く、不恰好なものであったような気がしています。明⽇のこと、昨⽇のこと、すぐ隣にいる⼈のこと、遠くに住む⼈のこと、⾃分⾃⾝のこと。この作品が、観てくれた⽅にとっての“⾒えないものに触れにゆく時間”になれれば嬉しいです。
コメント
幽霊は視界の隅に見えるらしい。
この映画の登場人物たちも画面の隅に見え隠れしたり、あるいは後ろ向きで顔が見えなかったり、はたまた声だけ聞こえたりする。
ところで亡くなったお祖母ちゃんってどんな人なんだろう…本当に亡くなったのか、そもそも実在していたのか。
どうして兄妹をはじめとした人々はこの家に吸着されてしまうのか。彼女らは実際問題生きているのか…。わからない。
けど、わかる物よりわからない方が面白いですよね。
渡辺 謙作(映画監督・脚本家・俳優)
『プリズン13』『舟を編む』
私が目を閉じている状態は一生のうちにどのくらいあるのだろう。
私が耳だけで人の気配を感じたのは一生のうちどのくらいだったんだろう。
私の感覚が地上にある以上、親しかったりそうでなかったりする人の気配を感じ続け、
また地上から私の感覚が消えたとしても私の痕跡を巡り、
他の人たちが囁き続けるのだとしたらそれはいつまで続くのだろう。
『夏だまりの家』は、そんな風にスクリーンを眺める私がまるで登場人物たちの家のどこかに転がってるような時間を感じさせてくれます。今から焼きそばを作るね。あ、もう食べてるね。やがてその焼きそばの場に、私も立ち会うことになりそうなくらいの近しさを感じながら、それはどこまでも遠く離れていて。
映像はスクリーンであってもモニター画面であっても、そこにあるのはどこまでも幻でしかないのに、音は時間を越えて本物である。この、映画の不思議をここまで感じさせるのも珍しい。映画の不思議はそもそも存在の不思議なのかもしれない。誰かと会うのは自身の存在を確かめる為でもあり、人と接する事に制限を加えられ、存在のあやふやさを嫌という程感じた2020年でなければ、この映画は生まれてこなかったのかも知れません。
鈴木 卓爾(映画監督)
『嵐電』『ジョギング渡り鳥』
生と死が曖昧な世界。生きていたはずの人が死んでたり、死んでいたはずの人が生きてたり。その世界ではみんなが一緒にご飯を食べる。監督の石井梨帆さんが眼差しを向ける場所では夏にも雪虫が飛んでいる。それがいつなのかはわからない。石段の上、物置の薄く開いた扉の向こう、破れた障子から漏れる光。粉々になった骨はどこに撒かれるか。解かれる毛糸はまたいつか何かを形作るだろうか。このさき石井さんが生み出す世界を見るたびに、きっとそのことを思い出す。二十年後、三十年後、またこの映画の話をできるといい。そのとき私がいなくても、他の誰かがその話をしてるといい。
杉田 協士(映画監督)
『ひかりの歌』『ひとつの歌』
卒業制作展アフタートーク
京都芸術大学映画学科 卒業制作展のアフタートークを録画配信しています。
出演:
杉田協士さん『ひかりの歌』(監督)
石井梨帆『夏だまりの家』(監督)
山口紗也可『夏だまりの家』(主演)
遺影のない祖母の人柄を、
役者たちを通じてうかがい知ることができる、いい映画でした。
人はいろんな気持ちを整理するのに、時間に頼ってしまいがち。
でもそれだけではないということが伝わりました。
自分はいろんな気持ちを整理するのに、
人は忘れやすい生き物だと思うようにしていますが、
この映画の場合は、それは余りにも悲しすぎるかもしれません。
自分は人を看取ったり、またじきに看取られるようになるかもしれない
中途半端な立場で、
そんな中で、この作品に出会えてよかったと思いました。
普段の生活音を作品を通して客観的に聴くことによって、
少し浄化された気がしました。
あと気になることがあって、
意図的なのか、繋ぎが不自然なところがあって…。
でも、
まだこれからも磨いていける作品じゃないかと思います。
コロナ渦での卒業制作お疲れ様でした。
これからのみなさんのご活躍を祈念しております。
遺影のない祖母の人柄を、
役者たちを通じてうかがい知ることができる、いい映画でした。
人はいろんな気持ちを整理するのに、時間に頼ってしまいがち。
でもそれだけではないということが伝わりました。
自分はいろんな気持ちを整理するのに、
人は忘れやすい生き物だと思うようにしていますが、
この映画の場合は、それは余りにも悲しすぎるかもしれません。
自分は人を看取ったり、またじきに看取られるようになるかもしれない
中途半端な立場で、
そんな中で、この作品に出会えてよかったと思いました。
普段の生活音を作品を通して客観的に聴くことによって、
少し浄化された気がしました。
あと気になることがあって、
意図的なのか、繋ぎが不自然なところがあって…。
でも、
まだこれからも磨いていける作品じゃないかと思います。
コロナ渦での卒業制作お疲れ様でした。
これからのみなさんのご活躍を祈念しております。