ピエタ

あらすじ

地元を離れ、友人も恋人も無く、根無草のような生活を続けている灯 沙耶香。ドクターフィッシュのささみに自らの皮膚を与えながら暮らしていた。沙耶香はマッチングアプリで繋がった何人もの男と同時に連絡を取っている。父からの電話。取り止めのない会話が続く。

一方、父である灯 繁吾は、夜な夜なオンライン風俗嬢の櫻子とのオンラインセックスに明け暮れている。
こうした別離生活が始まったのは、祖母、つまり繁吾の母が死んでからのことだ。 繁吾は、今も祖母の家に住んでいる。櫻子との行為は、祖母の空気がそのままに残るこの家屋からの逃避である。

ある日、沙耶香が足を水につけるとささみが皮膚を食べなくなっていた。 成長したドクターフィッシュは、皮膚を食べなくなるのだった。夜、知隼という男と通話していると「昔、動物を殺してしまった」と打ち明けられる。
沙耶香は、ドクターフィッシュの繁殖をしようとする。

ドクターフィッシュの群れが生まれる。群れが、餌を奪い合っている。沙耶香はその様子を、ただ、見つめるのだった。

監督

小原藍

Ai Kohara

劇作家・演出家1998年生まれ。
パフォーマンス団体 睡眠時間代表。劇作・演出を行なった睡眠時間vol.5『◎』で、2019年度京都学生演劇祭 観客賞・審査員賞・京都 学生演劇祭賞受賞。
再演にて、第五回全国学生演劇祭 大賞・観客賞・審査員賞受賞。
映画制作は、今作が初監督作品である。

作品へのメッセージ

この作品は、家にいる事しか出来ず、家の中でも何もまとまらないような閉塞感に活路を見出そうともがいていた時期の作品です。確かな手答えまでの過程が映像に刻まれているように、観客の目に斬り込めれば、と願望と妄想を込めて。